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2025年3月25日

【なかのひと】ËBRI STOREストーリー(前編)|廃墟を「宝の山」に変えた、あの日からの決意。

江別の街を象徴するれんがの建物「ËBRI(エブリ)」。その中にある小さなお土産屋さん「ËBRI STORE」は、今や地元の美味しいものや素敵なものが集まる場所として親しまれています。

しかし、この場所の始まりは、決して華やかなものではありませんでした。運営会社であるストアプロジェクト株式会社の代表・間宮が語る、12年前の「苦労」と「確信」のストーリーをお届けします。

フェーズ1:廃墟を「ËBRI」という器にするまで

ËBRIとして再生される前の旧ヒダ工場跡地

ーーまずは建物全体の成り立ちについて教えてください。12年前、そこはどのような場所だったのでしょうか?

間宮さん「当時はまだ私は東京で建築設計の仕事をしていました。そんな時に、父から相談が来たんです。『江別に古いレンガ工場があるんだけど、商業施設にできないか』って。

初めて現地を見た時は、正直に言って絶句しました。ガラスは割れているし、屋根には穴が開いて鳩が住み着いている。床もぐちゃぐちゃ。夜なんて一人では絶対に入りたくない、幽霊が出そうなほどボロボロの廃墟でした。」

ーーそこから、どうやって「店」にしようと思ったのですか?

間宮さん 「うちの社名は『ストアプロジェクト』。何もない場所に『商い(ストア)』という命を吹き込むのが仕事です。父から『お前も巻き込もう』と言われ、初めてのプロデュース、ブランディング、そして運営まで……。右も左も分からないところからのスタートでした。
ËBRIという名前も、75〜6案の中から父と話し合って決めました。エベツとブリック(レンガ)の造語ですが、みんなが毎日使える『Everyday』や、みんなのための『Everyone』という意味も込めたかったんです。」

ーー建物の構造は、一般的な商業施設とは全く違いますよね。

間宮さん「そうなんです。ËBRIの建物は昔増築を繰り返して、増殖するように伸びた形状をしています。商業の観点で平面図を見ると、動線ロスだらけで面積効率も悪い(笑)。普通、一店舗に貸すには不向きな場所です。
でも、だからこそ『小さな商店が集まる街のような場所』にしようと決めました。冬でも雪を気にせず、みんなが交流できる『屋内の商店街』を作りたかったんです。

まずは、江別の人たちが集まれる『場所(器)』を作ること。それが私たちの最初の挑戦でした。」

フェーズ2:器に魂を込める「ËBRI STORE」の誕生

12年前の改修前の様子。
現在の姿。当時の煉瓦の風合いを活かして改修された。

ーー建物が完成して数年後、その中に自社運営の「ËBRI STORE」を作ろうと思ったのはなぜですか?

間宮さん「ËBRIという場所はできた。でも、お客様からずっと言われ続けていたことがあったんです。『ËBRIのお土産はないの?』って。

テナントさんの商品はあるけれど、それはËBRIのブランドではない。この場所で過ごした時間や、レンガに触れた体験……そのストーリーを形にして持ち帰ってもらわないと、本当の意味で『ËBRIを持ち帰った』ことにならないんじゃないか。そう痛感したんです。」

ーー「場所」を作るだけでは足りない、と。

間宮さん「そう。だから2020年、起死回生のリニューアルとして、自分たちで商品をセレクトし、開発も手がける『ËBRI STORE』を立ち上げました。建物という器に、私たちが信じる『江別の価値』という魂を詰め込む。それがこの店の役割なんです。」

江別の「土」に触れる。それが、この店に込めた最大のテーマ。

ËBRISTOREでしか体験できないレンガ決済

ーー「レンガを持って買い物をする」という独特のスタイル。そこにはどんな想いが込められているのですか?

間宮さん「レンガって、江別の土100%でできているんです。そして、その同じ土を耕す農業や一次産業こそが、江別の力強さの源流なんですよね。

江別では130年も前からレンガ産業が盛んでしたが、今ではコンクリートに取って代わられ、用途も限られてきました。かつて14社あったレンガ工場も次々と閉鎖され、現在江別に残っているレンガ工場は3社。このËBRI自体も一度は役目を終えてしまった工場です。建築の世界では、レンガは遠くから眺めるだけの『建材』になりつつあります。だからこそ、私はËBRISTOREを作る時、どうしてもお客様にその『土の塊』を直接手に取ってほしかった。
驚かれるのは、商品の前に置かれた「ミニレンガ」を手に取って、そのままレジへ運ぶシステム。レジへ持っていくと、そのミニレンガに刻まれた商品情報を機械が自動で読み取ってくれるんです。あたたかなレンガの手触り。それは、この街が積み上げてきた130年の記憶そのものです。

日常の買い物という動作を通じて、失われつつある土地の記憶を新しい形で呼び戻す。そんな、他にはない『江別との出会い方』を形にしたかったんです。」

東京、札幌、そして江別。たどり着いた「芯の強さ」。

ーー東京でのキャリアが長かった間宮さんにとって、江別での日々はどう響きましたか?

間宮さん「東京って、いわゆる『標準』に合わせることが当たり前で、それが大人としての正解とされるような、少しフラットな空気感がありますよね。

でも、江別のエネルギーは全然違った。みんな自己主張がはっきりしていて、『自分たちがこの街を盛り上げるんだ!』『自分で動いて、解決するんだ!』というバイタリティがすごいんです。札幌のように軽やかにコミュニティを横断するのとはまた違う、ドシッとした結束力と地域愛がある。
江別の人たちの、ゼロから自分たちの手で作っていく芯の強さ。その『力強さ』と、ずっしり重いレンガの手触り、そしてそこから生まれる素材の力……。それらはすべて、私の中では一本の線で繋がっています。その泥臭くも熱いエネルギーに触れて、私の考え方も変わっていきました。」

壁に刻まれた、工場時代の息遣い。ËBRIを象徴するチョークアートの着想源となった。

「標準」に合わせる東京のフラットさ。個性を認め合いながら軽やかに繋がる札幌。
それらを経て間宮さんが江別で見つけたのは、「強烈な個性が、地元のことを自分事として捉えて動き出す」という泥臭いまでの力強さでした。

その熱量は、まさに江別の土を焼き固めた「レンガ」そのもの。
小さなお店が集まって一つの「街」を形作っているEBRIの姿は、一人ひとりが自立し、かつ手を取り合う江別の人々のあり方をそのまま体現しているように感じました。

「みんな(Everyone)」をテーマに掲げたこの店は、気づけば「江別という街そのもの」になっていたのです。

【後編へ続く】
「すべてを自分の手で組み上げ、形にしなければ」という設計者ゆえの責任感。それが、地域の仲間と共に創り上げる「みんなの成果」へと変わっていくまでの心の変化とは。
そして、間宮さんが語る「ギフト=ラブレター」に込めた、江別の新しい物語をお届けします。

Profile
間宮 なつき

東京の美術大学で建築を学ぶ。建築設計事務所にて、商業施設・住宅・店舗などを経験。2014年よりËBRIに携わり、2020年ストアプロジェクト株式会社代表取締役に就任。